PHIが連携を行う日本サステイナブル・レストラン協会が、農林水産省フードテック官民協議会において外食産業におけるサステナビリティ推進を目的として「サステナブルレストラン推進ワーキングチーム(WT)」を2025年5月に発足し、「現場からの変革」をテーマに料理人・シェフの視点から持続可能な飲食の実現に向けた指針を策定。『持続可能な食の未来へ 日本の料理人・シェフのサステナビリティ・マニフェスト:2030年へ向けた17の指針』を公開しました。

農水省リリース「サステナブルレストラン推進ワーキングチーム」設立・シェフズ・マニフェスト公開(PDF)

EAT-Lancet Commission 『持続可能なフードシステムからの健康的な食事』 も参照され、プラネタリーヘルス実現のための食の選択をレストラン業界をあげて推進する指針となります。

PHIもこのマニフェストの賛同者として、日本サステイナブル・レストラン協会と共に、アグリデントメディスンを通じて人・地域・地球にとって持続可能なフードシステム構築を推進していきます。


以下、サスティナブルレストラン協会 HP よりマニフェスト引用。


食文化の継承と多様性

1)日本の食文化や伝統料理を理解し表現する。

日本の豊かな自然からの恵みである食材に感謝し自然を敬う精神を大切にする。また日本各地に受け継がれてきた多様な食文化や、発酵食品をはじめとする食の伝統・知恵・工夫・慣習を表現する。そして、食事は命をいただく行為であることを深く理解し、その感謝の気持ちを料理に込めて伝える。

2)世界の伝統料理との融合を模索する。

日本各地の伝統料理を継承し尊重するとともに、世界の伝統料理にも同等の敬意を払い、サステナビリティを基本に据えながら、それぞれの料理と文化が共存し調和する新たな食文化の可能性を模索する。

3)料理を通じて会話と笑顔を生み出し、人々の心を結びつける。

食事は、栄養補給ではなく、人と人をつなぐ特別な時間でもあり、日常的な時間でもある。料理人として、食を通じて人々の心を結び、家族や友人が共に過ごす大切なひとときを創り出すことも使命の一つである。料理を提供することは、おいしさを届けるだけでなく、会話と笑顔を生み出し人々の絆を深める役割を果たす。料理一品一品に想いを込め、心温まる時間を演出する。


調達

4)生産者を支援し、地元産と旬の食材を使用する。

日本が育んできた「自然と共生し調和を重んじる」という自然観を基礎に、日本各地の里・山・海が持つ気候や風土・地形・水域を活かした地元産の食材を積極的に使用し、地域の食文化の継承を行うとともに原風景を守り、地域に活力を与える機会とする。また、四季を意識し、自然のリズムに寄り添った旬の食材を料理に取り入れる。生産者の高齢化が進む現状を踏まえ、食料自給率を維持・向上させるため、地域の生産者を支援するとともに、自産自消の取り組みも推進する。

5)健康な土壌で生産された農産物を使用する。

自然との調和を尊重し、健康な土壌と生物多様性が保たれた環境で生産された農産物(例:無農薬や無化学肥料の作物)を使用する。自然が育んだ素材の持ち味を最大限に引き出し、食べる人が本来の味覚に目覚める一皿を届け、真のおいしさを追求する。

6)絶滅危惧種や数が減少傾向にある魚の使用を避け、追跡が可能な水産物を使用する。

絶滅危惧種や数が減少傾向にある魚、またその稚魚や魚卵の使用は避ける。漁師や水産業関係者と連携し、環境影響の少ない漁法で獲れた天然魚や、環境に配慮した養殖魚・認証魚を含めて追跡が可能な水産物を使用する。IUU(違法・無報告・無規制)漁業由来の魚は排除し、未利用・低利用魚の活用も進める。

7)アニマルウェルフェアと環境に配慮した畜産物を使用する。

アニマルウェルフェア(動物福祉)を重視し、平飼いや放牧など倫理的な飼育方法で育てられた畜産物を選ぶ。自然環境や社会に配慮した飼料を使用して育てられた食肉を提供する。さらに農作物被害対策として捕獲された野生鳥獣(猪や鹿など)をジビエとして活用し、地域資源としての価値を高め、食文化の多様性に貢献する。

8)植物性食品を積極的に取り入れる。

植物性食品の提供を増やし、野菜・果物・豆類・全粒穀物を中心に据えたメニューを取り入れることで、伝統的な食文化を尊重しつつ、バランスの取れた植物性食品の料理を提案する。また、肉や乳製品を使用しない日を設定するなど、動物性食品の使用を控えめにし、代替タンパク質として豆類・ナッツ・発酵食品などを活用し、栄養価を損なわずに提供する。

9)食のサプライチェーンに関わる全ての人権を尊重し、環境にも配慮した調達を行う。

国内外を問わず、サプライチェーン上の生産・加工・流通に関わるすべての人々の人権を尊重し、自然環境にも配慮した調達を行う。また、エシカル認証品を優先的に使用し、公正な価格設定や適切な労働環境の提供、児童労働や強制労働の排除を徹底する。


環境

10)エネルギーの使用を減らし、カーボンフットプリントを削減する。

地元産で旬の食材の使用することに加え、省エネルギー技術や環境負荷を低減する最新の調理技術や機材を選択し、キッチンでの資源使用量と環境影響を削減する。また店舗のカーボンフットプリントを計算するとともに、環境影響が高い食材とは何かを理解し、レシピの環境影響の情報を提示する。

11)食品ロスを削減し、食材を無駄なく活用する。

食品ロス削減は、料理の質向上と経済効率化の両面で重要な取り組みである。適量での提供、食材の最適利用、在庫管理の徹底、地元産食材の使用による輸送ロス削減、料理の残りの持ち帰りの推奨や寄付などを実施する。また、廃棄される食品は焼却せず、持続可能な廃棄物処理(飼料・肥料・燃料等へのリサイクル)を目指す。

12)資源の使用を削減し、再利用やリサイクルを通じて無駄をなくす。

缶・ビン・PETボトル・紙・段ボールなどを資源として扱い、①リデュース(削減)、②リユース(再利用)、③リサイクルの優先順位で取り組む。使い捨てプラスチックの削減を推進し、再利用可能な包装材や生分解性素材を活用して廃棄物の発生を最小限に抑える。

13)生産者と連携して生物多様性の保全と自然環境の回復に貢献する。

持続可能な農産物・水産物・畜産物の使用を進め、一次産業関係者と積極的にコミュニケーションを図る。生物多様性保全に向けた協働を検討し、具体的な行動を実践することで、ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に貢献する。


社会

14)誰もが公平に評価され、安心して働ける職場環境をつくる。

飲食店の労働者が公平に評価され、適切な処遇を受けられるよう、業績評価・スキル開発・キャリア形成を重視する。公正な報酬や福利厚生の提供、労働環境の改善に努め、多様性と包摂性を尊重する。誰もが尊重され、差別や偏見なく、安心して働ける職場環境を整える。

15)健康と地球環境に配慮した食事を提供する。

食品の安全性と健康への影響を考慮し、添加物については科学的な知見をもとに厳選して使用し、安全で健康的な食事を提供する。また、健康と地球環境に配慮し、植物性食品を中心とした持続可能な食材の活用を推進する。新しいバイオテクノロジー技術に関係する食材については、その情報をメニュー等に明示し、消費者が選択できる仕組みを整え、食の透明性を高める。

16)栄養バランスの取れた食事を提供する。

栄養バランスの優れた食事は、身体を健やかに保つだけでなく、心の安定や感情の豊かさにもつながる。食事は心身の健康も支える重要な要素であることを認識する。また発酵食品など、腸内環境を整える効果があるものや栄養価の高い食事を提供する。

17)リーダーシップを発揮し、パートナーシップを締結して、サステナビリティの意識啓発を行う。

一次産業関係者や食品企業、流通業者、大学、行政機関などと連携し、サステナビリティの重要性を広める活動を推進する。また、地域コミュニティとも協力し、持続可能な取り組みを支援しながら、地域社会全体での意識向上を目指す。これにより、気候変動や生物多様性への悪影響を最小限に抑え、持続可能なフードシステムの構築を目指す。


マニフェスト全文(srwt.jp)


参考文献

  • 文部省、厚生省、農林水産省(2016)『食生活指針』
  • 農林水産省(2023)『アニマルウェルフェアについて』
  • 世界保健機関(WHO, 2021)Plant-based diets and their impact on health, sustainability and the environment
  • 経済産業省(2022)『責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン』
  • イート・ランセット委員会(2019)『持続可能なフードシステムからの健康的な食事』
  • 環境省(2023)『環境白書』(サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブ各節)